瀬戸でその話を最初に聞いたとき、僕は「へえ」と流した。10年後、また聞いた。10年経っても、まだ「あと25年」。誰も引き算をしていない。調べてみたら、器を作る土のほとんどが足元から採れる、世界的にも珍しい場所だった。この街に住み、デザインの仕事をして、20年以上が経っていた。
なぜ足元のことはわからなくなるのか。
近くにあるものが見えなくなるのは、産地だけの話ではない。僕も含めて、会社もそうかもしれない。私たちはたいてい、自分の足元をひとつの点だと思い込んでいる。点と点があると、人はつい線で繋げたくなる。繋げる前に、点のままよく見る。中に、思ってもみなかったものが入っている。
点の中を見てみよう。
私たちは、お会いする方の点を一緒にのぞきこんでいます。会社、工場、窯元、畑、店先。外から眺めているうちは、中身は見えません。通って構造を掴み、「うちは普通ですよ」に埋もれているものを、ブランドと経営の言葉に置き直す。これを「足元の呪い」と呼んでいます。
デザイン事務所なのに、デザインをしないほうがいいと言うこともあります。自分で仕事を減らしているようですが、見た目を変えることが答えではない場面が実際にあるからです。単発の納品ではなく、事業の構造から一緒に組み直しています。
愛知県立芸術大学大学院美術研究科修了。電機メーカーのデザイン研究所で商品開発・新規事業開発に携わったのち独立。工業製品・家具・空間・グラフィックを横断し、近年はデザイン顧問・ブランドディレクターとして、産地とものづくりの会社の事業支援・経営支援を行う。愛知県立芸術大学 非常勤講師。土街人プロジェクト 代表発起人。ウラタイルプロジェクト 代表。